脳卒中とは

脳卒中のイメージ画像

脳の血管が閉塞あるいは破れるなどすることで、何の前触れもなく神経症状が現れた状態の総称が脳卒中で、脳血管障害と呼ばれることもあります。脳卒中は虚血性脳血管疾患と出血性脳血管疾患に分けられます。虚血性には脳の血管(動脈)が詰まって血行が途絶えてしまうことで脳組織が壊死する脳梗塞、また出血性には脳の細い血管(動脈)が破れ、脳実質内に出血する脳出血、クモ膜下腔に脳動脈瘤が破裂するなどして出血するくも膜下出血があります。

また、日本人の脳卒中患者さんのおよそ4分の3にあたる方が脳梗塞を発症しており、脳梗塞はさらに3つのタイプに分かれます。また脳卒中は介護が必要になった疾患の原因第1位にも挙げられるなど重篤となるリスクが高いのも特徴です。そのため、早期発見、早期治療が不可欠でもあるのです。

なお、脳卒中が起こった際の代表的な症状というのがあります。それは、しびれや感覚障害、構音障害、失語、失認、激しい頭痛、嘔吐・吐き気、意識障害などです。脳卒中の疾患ごとに以下の表でまとめましたのでご確認ください。これらの症状に心当たりがある方は一度ご受診ください。

脳梗塞…身体の片側の麻痺、舌が麻痺して呂律がまわらない、片側の手足や顔面の感覚障害、ふらつき、意識障害など
脳出血…頭痛、めまい、吐き気・嘔吐、片方の手足の麻痺やしびれなど
くも膜下出血…突然起きる激しい頭痛、項部硬直、嘔吐、意識が朦朧あるいは消失

検査について

患者さんの訴えや症状から脳卒中が疑われる場合、頭部のCT検査あるいはMRIを行い診断します。その結果、急性の脳卒中であれば入院による緊急の治療となります。

主な脳卒中の種類

脳梗塞

脳梗塞とは、脳血管の一部が何らかの原因で詰まってしまうことで、それよりも先に血液が行き届かなくなることで、脳細胞が損傷を受けている状態をいいます。ただ一口に血管が詰まるといいましても、その詰まり方によって脳梗塞は大きく3つのタイプ(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳梗塞)に分類されます。高齢者で発症すると寝たきりになりやすい病気でもあるので要注意です。

アテローム血栓性脳梗塞

首や脳にあるとされる比較的太い血管にアテローム(粉瘤)が蓄積することで、血流が悪くなる、あるいは詰まるようになります。アテロームの原因は主に動脈硬化ですが、動脈硬化を引き起こすのは、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。主な症状は、体の片側の麻痺、しゃべりにくい、ふらつきなどです。また梗塞の部分が大きいと意識障害が起きることもあります。

ラクナ梗塞

脳動脈の細い血管(穿通枝)が詰まることで発症するとされる小さな梗塞(直径にして1.5cm以下)になります。梗塞の場所によっては症状が出ないということもありますが、現れる場合は運動障害やしびれ、構音障害がみられます。意識障害や失語、失認といったものはみられにくいです。同タイプは、高齢者や高血圧の患者さんに起きやすいといわれ、原因はアテローム血栓性脳梗塞と同じく動脈硬化です。以前は、脳梗塞の患者さんの中でもラクナ梗塞を発症している方が多かったのですが、最近はアテローム血栓性脳梗塞患者さんの方が増えている傾向にあります。

心原性脳塞栓

心疾患が原因で起きる脳梗塞で、その多くは心房細動(不整脈)が引き金になっているといわれています。この心房細動は心臓内に血栓を起こしやすくするとされ、この血栓が脳血管の方まで流れ、ここで詰まるなどして起きた脳梗塞を心原性脳塞栓といいます。この血栓そのものは大きく、脳の太い血管で起きることから脳梗塞の範囲が広くなるので、重症化しやすく、また何の前触れもなく血栓が血管に詰まり、手足に重度の麻痺が出る可能性が高くなります。主な症状は、突然の片側の麻痺や構音障害、失語や失認といった皮質症状、意識障害などです。

治療について

脳梗塞の症状が発症して間もない頃、急性期の治療としてはt-PA静注療法という血栓を溶かす強い薬を使用(発症4時間30分以内)していきます。またカテーテルを使った血栓回収術などが検討されることもあります。このほか、動脈硬化が原因の脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)については、その起因となる生活習慣病(高血圧、糖尿病 など)の治療や予防を行うことも大切です。また心原性脳梗塞では、心房細動による血栓を防がなくてはならないので、抗凝固薬の内服などで血栓をできにくくする必要があります。

脳出血

脳の血管が破れて、脳内に出血が見られている状態が脳出血です。この出血によって、血の塊が脳を圧迫したり、脳に浮腫が起きるようになります。これらが脳機能に障害を起こすようになり、頭痛、嘔吐・吐き気、手足の運動麻痺や感覚麻痺、構音障害のほか、場合によっては意識障害が起きるようになります。

なお脳出血が発症する原因はいくつかありますが、その大半は高血圧といわれています。つまり、高血圧から動脈硬化を招き、さらに慢性的な高血圧によって血圧の高い状態が続くようになるので、脳の血管はその負荷に耐えられなくなって破れ、脳内に出血がみられるようになるのです。患者さんの症状や訴えなどから、脳出血が考えられる場合、頭部CTや頭部MRIなどによって診断をつけるようにします。

治療について

出血が多量で意識レベルが低下し、命の危険があるという場合は、外科的治療が優先的に行われます。出血量が少ない場合は、薬物療法による内科的治療となります。具体的には、出血が増えないようにするための血圧を下げる降圧治療、出血で腫れた脳のむくみをとるための脳圧降下薬の使用などです。また、しゃべりにくい、手足が動かしにくいのであれば、併せてリハビリテーションも行っていきます。このほか動脈硬化を招く高血圧をできるだけ改善させるように生活習慣の改善(食事療法、運動療法)なども重要です。

くも膜下出血

主に脳主幹動脈に発生した動脈瘤(こぶ)が破裂し、くも膜下腔に出血がみられている状態がくも膜下出血です。

そもそも動脈瘤が発生する原因ですが、これは先天的な血管異常や高血圧などによって起きるとされ、発生後もさらに慢性的な血圧の上昇が続いているのであれば、やがてその圧に耐えられなくなった動脈瘤は破裂します。そして破裂によって出血した血液は、脳とくも膜の隙間から浸透する感じで広がっていきます。これがくも膜下出血の発症メカニズムです。また一度破裂して出血がみられた動脈瘤は、再び短期間の間に出血することもあるので、入院による絶対安静を要することになります。

発症に関してですが、これといった前兆もなく、激しい頭痛、嘔吐・吐き気、意識が朦朧もしくは消失するなどの症状が突然みられます。なお動脈瘤からの出血が少なければ、頭痛は軽症で意識も正常であることが多いのですが、これはより重篤なくも膜下出血の警告症状と捉えた方がいいでしょう。また出血が多量で脳内に血液が流れ込んでいる場合は、生命に影響が及んだり、重篤な後遺症が残ることも考えられます。診断は、画像検査(頭部CTなど)によって医師が判定します。

治療について

なお治療の目的は、動脈瘤を再び破裂させないことです。その方法としては、保存療法と手術療法があります。前者が選択される場合、血圧のコントロール、抗脳浮腫療法などが行われます。手術療法が必要と医師が判断すれば、開頭による手術とカテーテルによる血管内治療になります。開頭手術とは、動脈瘤の根元をクリップで挟んでそこに血液が入り込まないようにする開頭クリッピング術になります。カテーテルの場合は、足の付け根の動脈からカテーテルを脳内まで挿入していき、破裂した動脈瘤にコイル等を留置して、血液を動脈瘤に流れないようにするコイル塞栓術になります。